古都西安

独自の料理をつくりだした西安

シルクロードの起点であった古都・長安、現在の西安は、西はローマ、東は日本までと、広く世界の食材や料理文化が集まった都市でした。また、隣接するイスラム圏の影響も強く受けていることがわかります。たとえば、西安で人気の高いメニューのひとつ、羊肉料理。これは、イスラムの羊肉料理が中国料理と融合し、現在の味を形成してきたもの。加えて、孜 然(ズーラン)と呼ばれる香辛料のように、イスラムやインドの料理を思い起こさせる香りをプラスすることで、西安のオリジナル料理をつくりだしてきました。
レストランのキッチンを覗いてみると、自家製の辣油(ラー油)、葱油(ネギ油)、山椒油(サンショウ油)を始めとして十数種類の香り油が仕込まれているのがわかります。ラー油ひとつを取っても、5〜10種類の香辛料を混合し、ゴマ油と調合してつくりあげます。
西安の料理は、このように数種類の香り油や香辛料を混合し、複雑な香りや辛味で、絶妙、かつ独自の味のハーモニーを醸し出すもの。西安では、スパイシーでありながらも「なんの香辛料を使っているのか解らないのが、一流の調理人である」といわれるあたり、この長い歴史に育まれた食文化を、見事に表しているといっていいでしょう。

主食の小麦。その食し方はバラエティーに富む

小麦は、シルクロードを経由して西安にもたらされた食材のひとつ。中央アジアが原産地といわれる小麦は、粉に加工されて、麺、餃子、パンや饅頭などへとなっていきました。現在西安の民衆の食事は、1日3食中、2食は粉食(麺・餃子等)、1食が米食(粥白飯等)というのが一般的。かつては長安人の食卓を飾り、そして今でも、主食として食べ続けられているのが、小麦というわけです。
この小麦食文化の代表の麺。西安では数多くの麺料理が食されています。麺の種類は数多く、刀削麺、切麺、拉麺、手斬麺、猫耳麺、龍髭麺、撥魚麺、麺皮、などがその代表です。調理法もさまざまで、さらに具材・味付けを組み合わせると、麺料理の種類は数えきれないほどです。
この他の小麦を材料にした食品には、餃子、小龍包、焼餅や、大餅と呼ばれるイスラムのパンなどがあります。とくに餃子はポピュラーな食べ物で、種類は数百を超え、餃子の専門店も市内にあります。また、小龍包も有名。こちらも市内の真清街(イスラム屋台街)に専門店があり、地元でも人気です。西安の小龍包は醤油味で、タレをつけずにいただきます。
今では中国ですっかりポピュラーになった小龍包ですが、一説によると上海や台湾の小龍包の原型になったのが、西安の小龍包で、その過程で醤油味から塩味に変化したとも。同じように、"長安"の麺は、日本へは空海(弘法大師)が讃岐うどんとして、イタリアへはマルコポーロがパスタとしてもたらしたともいわれています。

麺の種類

刀削麺・・練った小麦粉を片腕で抱え、もう一方の手に小刀を持って薄く削ぎ、熱湯に直接
      落としでる麺
切麺・・・小麦粉を薄く打ってから刀で切った麺
拉麺・・・練った小麦粉を両手で引っ張って伸ばし、折ってまた伸ばし、として作る麺
手斬麺・・「切麺」と同じ物。
猫耳麺・・練った小麦粉を指先でつまんでちぎり、熱湯に直接落として茹でる麺
龍髭麺・・拉麺よりさらに細く伸ばした麺。
撥魚麺・・特別の箸で練った小麦粉を切って作り、麺の形は魚のようにみえる
麺皮・・・小麦粉を水に混ぜて、鉄皿に入れて蒸した皮。