西安通信

第5回 臓腑について


臓腑は単独のものではない

 中医学における臓腑と、西洋医学における臓腑には大きな差があります。中医学における主要の臓腑は「心・肝・肺・脾・腎・大腸・小腸・膀胱・胆・子宮・脳・骨・血脈・髄」を指し、「心臓」「肝臓」のように「臓」がつかないのは、解剖学的な各部分ではなく、関連する部位を含めた総括的な機能を意味するからです。各臓腑はそれぞれ異なる生理作用を行いますが、互いに関連し、依存し、制約、促進しあっています。人間の生命活動はすべてこの臓腑間の密接な働きにかかっており、さらにその作業は単に肉体のみにとどまらず、精神や思惟と身体の関係まで及ぶのです。
 一つの臓腑に異常が起こると、必ず他の臓腑にも影響が及びます。特に、「肝と胆」「脾と胃」「腎と膀胱」「心と小腸」「肺と大腸」は表裏の関係にあり、片方が病気になると双方の調子も悪くなってしまいます。

肝の異常は目に現れる

 各臓腑の異常は、関連する器官を通って身体の表面に現れ、様々な症状を引き起こします。

肝・胆 →目 視覚異常・血液の循環不全による肩こり、生理痛、肋間神経痛、背中の痛み、関節の痛み、筋肉痛・怒りっぽい・不安感・疲労感
心・小腸→舌 口内炎・動悸・寝汗・精神障害による不安感、不眠、眠りが浅く沢山の夢を見る
脾・胃 →口 口の中が酸っぱい・ゲップ・消化吸収不良・常に満腹感がある・軟便・新陳代謝の異常による肥満、太れない、糖尿、リウマチ、痛風関節の痛み、筋肉痛・貧血・目眩・子宮下垂・月経量の異常・だるい・話すのがおっくうである
肺・大腸→鼻 鼻つまり・喉のイガイガ感、つまり・痰・咳・喘息・四肢の冷え皮膚の痒み
腎・膀胱→耳 耳鳴り・耳が遠い・記憶力衰退・下肢に力が入らない・歯が抜ける抜け毛・大小便の失禁・性機能の衰弱・不妊・おりもの

 これらの症状は各臓腑の効能の異常によるものですが、放っておくと臓器自体の病気につながります。例えば、暴飲暴食をすると胃の働きが弱まり、弾力性がなくなって傷つきやすくなります。これが潰瘍や癌のもとになるのです。効能の異常の段階でも発見でき、治療する。これが中医学の大きな特徴といえるでしょう。