西安通信

第9回 新陳代謝の異常 その一


胃と脾の効能低下が代謝の異常を生む

 「食べ物から吸収したブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンによって身体のエネルギー源となるが、このインスリンが不足したり働きが悪くなると、ブドウ糖が血液中にとどまり血糖値が高くなる」これが西洋医学における糖尿病です。しかしながら中医学には膵臓やインスリンといった概念はありません。糖尿病に限らず痛風やリューマチ、関節に水が溜まるといった症状の原因は、代謝の異常によって余分な物質が体内に残っているからだと考えられています。代謝で重要な働きをするのは胃と脾、つまり消火器の効能低下が問題なのです。胃の不調と関節の痛み、一見関係なさそうですが、骨や筋に異常がある場合は常に痛むはずです。いつもじゃないけど何かの時に痛くなる。その何かの時とは、食べ過ぎやストレスなど胃に負担がかかった時ではありませんか?消火器の効能低下は大体3タイプに分けられます。

胃熱タイプ
ストレスや刺激物、脂っこいものの食べ過ぎによって胃に余分な熱が溜まってしまう。熱はエネルギーを消耗するためいくら食べても太らず、すぐお腹が空く。その他胸やけ、みぞおちの灼熱感、口臭、のどの渇き、便秘など。

脾胃湿熱タイプ

お酒と高カロリーの食生活によって湿熱(水と熱)が胃に溜まっている。食欲不振、腹部が張った感じがする、脂っぽいものを見ると吐き気がする、倦怠感、尿の色が濃い、下痢をしやすい。
脾虚痰飲タイプ
痰とはのどのタンだけでなく、代謝できず体内に残った物質すべタイプてを指す。過冷食品や生ものの食べ過ぎで消化吸収能力が低下し余分な物質が蓄積されてゆく。いつも胃腸の調子が悪い、疲れやすい、食欲不振、胃がムカムカする、水っぽいタンが多く出る。

 

食事の配分は飽・好・少が良い

 上記の3タイプに共通していえることは、ずばり偏食です。もちろん偏食だけが原因ではありません。生まれつき消火器の働きが弱い人やストレスを感じやすい性格の人もいます。胃、心、肝、腎、など身体のエネルギー製造に関わる臓腑の失調は親から遺伝しやすく、精神的な刺激に弱い臓腑でもあります。しかし先天性の弱さも、普段の食事や運動などに注意することによって改善出来ます。インスリン注射は症状を抑えるだけで糖尿病の根本的治療ではありません。一番効果的で、かつ現代人には一番難しい治療法、それは自己管理なのです。
 中国では理想的な食事配分のことを「飽パオ・好ハオ・少シヤオ」といいます。朝はお腹いっぱい食べ、昼はご馳走を、夜は少なめにするという意味です。朝に食べたものはこれからの活動で容易に消化することが出来ます。しかし夜、睡眠中は胃の消化吸収能力が弱まっており、大量に消化することが出来ません。消化できずに残ったものは蓄積され、胃の働きを妨げます。朝食抜きで昼は立ち食いソバ、夜は接待で美食とお酒といった食生活が胃にかける負担は相当なものです。朝は忙しくて食べる暇がないという方もせめて夕食は軽めにし、就寝の3時間前に済ませてください。また、ケーキやチーズなど高カロリーのものは消化しにくいので、甘いものが好きな方はなるべく午前中に食べるようにしましょう。1日の食事の量は同じでも、配分を変えるだけで胃の調子はかなり良くなってきます。

梅雨をのりきるには

 湿度の高い梅雨は、身体にとって年間で最もやっかいな時期です。体内の湿熱が増え、胃液が固くなったために、関節炎、筋肉痛、皮膚の痒み、水虫、陰部の痒み、おりもの、下痢、小便不利、胸やけなどの症状が現れます。しかし、本来人間の身体は外気からの熱や寒、湿に対して順応出来るようになっています。やはり問題は内因です。この時期は特に精神安定と食事に注意しましょう。湿熱を生む生もの、過冷食品、蟹、コーヒー、お酒、白糖、酢は控えて下さい。逆にショウガ、胡椒、サンショウなどは、湿熱を乾燥させる作用があるのでこの時期のお料理に活用できます。