西安通信

第15回 養生について その一 飲食


出生後の体質は飲食によって決まる

 私たちの体質は、先天性と後天性の二つに分けられます。先天性とは両親から遺伝したもので、両親の元々の体質だけでなく、妊娠した時の体調や精神面にも影響されます。先天性の体質は一生変えることのできないものです。これから妊娠を望まれるご夫婦は、心身ともに万全を期した方が良いでしょう。
 後天性の体質は出生後の飲食によって決まります。先天性が弱くても、後天性を強くしてカバーすることは可能です。逆に先天性が弱くても、後天性を強くしてカバーすることは可能です。逆に先天性がいくら上部でも、偏食によって作られた後天性の体質が弱く病気がちということがあります。成人後にアトピーになってしまったり、ある年急に花粉症になってしまったりするのも、後天性の体質が変わったためです。その主要な原因が毎日の飲食だとしても、長年の習慣を変えるのはなかなか難しいもの。しかし、これは本人がやるしかないことなのです。

みかんは白い筋も食べるべき

 中医学における「飲食」は、「飲=食べ方」と「食=食べ物」の二つを表します。何をどう食べるか、いかにして食べ物の栄養成分を消化吸収させるかを重視し、おいしい、まずいは二の次です。味覚ばかりを追求して病気になっては、本来の「飲食」の目的から外れてしまいます。中国の先人たちが経験から得た「飲食」のポイントをいくつかご紹介しましょう。

* 高タンパク、高カロリーの食べ物は消化しにくいので、生のまま食べ過ぎてはいけない。夜は控えたほうが良い。
* 青菜はおひたしにするよりも、スープに入れて煮汁とともに食べたほうが栄養成分を無駄なく取ることができる。
* みかんの実は果糖が多く、食べ過ぎると口内炎ができる。周りの白い筋には代謝作用があるので、一緒に食べたほうが良い。
* 落花生の赤い渋皮には鉄分が多く含まれており,貧血の女性には最適である。中の実は油脂が多いので食べ過ぎるとニキビの元になるが、渋皮や固い殻と一緒に食べると余分な油脂は排出される。
* ビールには消化作用がある。しかし冷えたビールを飲んだ場合は、胃の働きが止まりその作用は激減する。体内にはアルコールと水分、そして冷えが残り、これらは病気の元となる三大外因(寒・熱・湿)のすべてを満たしてしまう。

 胃の異常は痛みだけではない

  体内に入った「食=食べ物」は胃で消化され、胃と密接な関係にある脾で代謝されます。胃と脾は食べ物をエネルギーに変える重要な臓腑です。これらが正常に働かなければどんなに栄養価の高いものを食べても消化吸収できません。脾は特に冷えと湿度に弱いので、冷たいものを飲みすぎると代謝が悪くなり、パートナーである胃にも影響が及びます。胃の異常は痛みだけではありません。下記のような症状にも、胃と脾の効能低下が関係しているのです。

・ 頭が重い ・目眩 ・皮膚の痒み ・関節の痛み ・膝に水が溜まる・ 下肢がだるい
・手足の冷え ・歯茎の腫れ、出血 ・1日に何度も便が出る

 ストレスを感じた、不愉快なことがあった、激しく怒った、悲しくて泣いてしまったなど,精神的に良くないことがあった時、そして肉体的に疲れている時は、健康な人でも胃の働きが弱まっています。そんな時は食欲のあるなしに関わらず、食事は控えたほうがいいでしょう。空腹で眠れないようでしたら、コンソメスープや少量のパンでお腹をなだめ、翌朝沢山食べたほうが胃に負担がかかりません。
 ビタミンやカルシウムの錠剤は、飲むのは楽ですが胃にとっては消化しにくいものです。長期の服用で胃が炎症を起こすこともあります。栄養は自然の食べ物から取るのが一番です。面倒くさがらず、毎日の「飲食」を大切に。